異端者

reipisuto 7

2009/11/25 12:55

 半身浴を楽しむように誰もいない月夜の晩、母さんはいつだって月夜に揺れていた。

 あのひとが、あのひとが僕の父さんだった。

「答えてよ」

 そっと足音を忍ばせるように母さんに近づいていった、あの瞬間だけは、僕たちを幸せにしようとしていたのかも知れない。

 だけど、すべてがそこで止まってしまった。

 まだ母さんは若すぎた、禁欲を重んじる世界とて本能は必ず存在するものだ。

 だから、僕は洗礼を受けることを拒否した。

 魔物と言う悪夢が足音を立てないように他の修道女たちは早々と眠ってしまう。

 だからこそ母さんは悪だった、夜な夜な悪魔との性交を繰り返す罪深きもの、けして懺悔は届かない。

 言いたいものには好きに言わせておけばいいよ、母さんが素肌になれない理由、それは君の身体にも残ったままの傷跡だ。

 この世の中など、従いざる者と従わせる者がいる、それはどこの社会にもあることだ。

 なにを不思議がることがある、母さんは理解されない世界で背徳を宿した。

 ほら、身体が反応を示そうとしている、それほどに狂おしいひと、それが父さんだ。

 いつだって聞こえない振り、でも、今の僕ならわかる。

 願いは届かないものさ、いつだって。

 

 ときに悲鳴にも聞こえれば歓喜にさえも取れる。

 その一線の向こうにあるもの、それが本当の快楽だ。

 後ろめたければ後ろめたいほどに感じる、ほらもっと、叫んで。

 痛さも恥ずかしさもすべてが飲み込まれていく、誰にも言えないことをしようよ。

 ほら、目を閉じてごらん、本当に欲しがったものはなに?

 もう一人の僕が微笑む、まるで脆く音を立てるように崩れていった。

 怯えた母さんの顔に魅せられるように、もう一人の僕が目覚めていく。

 本当に簡単だった、まるで枯れ枝を折るように折れてしまいそうな身体。

 辱めるように縛り上げた、次はなにをしようか。

 

 

 うっ血を起こすように赤みを帯びた身体が躍動を示すように揺らめいていた。

 月夜に輝く裸体に魅入られそうだ。

 そっと甚振るように愛でる舌先に甘い吐息が揺れる、押し殺したいほどの舌触りでさえ、ほら欲しがってる。

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reipisuto 6

2009/11/24 10:32

「どうしたい?」

 思うだろうね、どうして自分ばかりがこんな目にあうのか。

 だれに話しても、この屈辱をわかつことはできない。

 理解できないことを避けるのが言わば人間の本能だ、これからを応用させて貰う。

 

 人間なんて、一つ要求を飲めば次がくる。

 だから終わらない、その要求が今をエスカレートさせていくだけだ。

 だから終わらせるしかなかった。

 

 

 壊してはじめてを知った。

 限りがあるのがひとだ、失って気づくこともあれば失ったからこそ、その意味を知ることもできる。

 

 儚いね、いつだって。

 

 

     *

 

 

 

 女は三人をどうじに相手にできる効率的な生き物だ。

 けっきょくは獲物にしか過ぎない。

 少し賢ければ、君のように上手くコントロールできる。

 僕は君のためにだけ生きた。

 後悔はしていないよ。

「ほら」

 追い詰められた顔は女が違ってもけっきょくは一緒。

 それでもまだ見たいと言う要望は消えない。

 人前で恥をさらすのは屈辱的だ、見せないでいることを見せることで、ひとは興奮する。

 所構わず吐き出すしかない今、女の躊躇いが痛みからの解放を迷わず突き進んでいった。

 泣くのも一つの生理現象だ、顔を強くしかめれば誰だって涙はでる。

 けして可哀想なことではない。

 汚いことをどうして覚える必要があるのだろう、当たり前のことなのに。

 床に撒き散らしたと言うよりも噴出した、エネマプラグを目前に見せるなり、床に吐き出した汚物をつかむように見せた。

「もう終わったね」

 頬を打った、なんども、女が頷くまで頬を打つ。

 悔しさを滲ませながら泣く、いつだって同じ顔にしか見えない。

 母さんもそうだった、けっきょく力では勝てなかった癖に自分を責めた。

 だから死んだ。

 修道院に逃げ込むなり僕を産み落としたひと。

 けして名を告げない母さんはマグダラのマリアと忌み嫌われてきた。

「泣かないで」

 それが僕の口癖だった。

 修道院を出なくてはいけない年齢になるまで僕は母さんと過ごしてきた。

 後悔はない、母さんも後悔はしてなかった、今だからそう思える。

 僕のなかで翼がじょじょに芽生えていく感触、死が少しずつ足音を立てて近づいてきていた。

殺意 2

2009/11/22 01:43

 ここに来るまで、ここに来てもまだ躊躇う。

 気まずいまま夜が明けていくのを待った。

 グラスを傾けたカウンターで、まんじりともせず動けなくなっていた。

 ふと肩を叩かれ我に返った。

 あの日もここに来た、今日もまた来てしまった。

 静かに男は隣に座った、座るなり「シン」と呟いた。

 この世界に誘い込んだ張本人だ。

「おなじものを」

 頬杖をついたままの男に、シンは微笑んだ。

 好きになれば本気になる、無責任に誰かを好きになることが怖い。

 らしくない戸惑いに笑みさえこぼれる。

「犯されると思った」

 シンは笑った、ここに来ても、なに一つ男は変わってない。

 誘ってよかったと今でも思う。

「犯されてこいよ」

 男は苦笑まじりに曖昧に頷いた。

 グラスを傾けあうと男は立ち上がった。

 はじめて素肌になることさえ躊躇うほどに、女が眠るホテルへと踵を向けた。

 

 

 

 

     了

 

殺意

2009/11/21 07:02

 淫らに責めていきたい。

 

 辱めるように手なずけたくなるほどの劣情だ。

 押し倒されるように女を見た、逃げることを知らない眼差しを前に男は躊躇いさえも覚える。

 偶然の再会、元同僚と言うには男は変わり果てていた。

 ナイフのような鋭い眼光、見るものすべてを虜にするには十分だ。

 好きだった、あのとき好きを履き違えなかったのなら平凡な生活がいま、あったのかも知れない。

 懐かしいほどの響き、そんな名前で呼ばれていたのだと男は思った。

 すべてを忘れるために愛するものを差し出したつもりだった。

 だが残ったのは憎しみだけだ。

 

 顔の輪郭をなぞるように女が男を覗き込む、素直に話をした。

 女は驚きもせず「そう思ってた」とだけ言った。

 仲のいい友達同士だった、臆病なまでに抱くことができなかった。

「結婚願望が強かったからな」

 普通のセックスができなかった訳ではない、好きだからなにもできなかった。

 結婚も男なりに真剣に考えていたつもりだ。

「友達関係も腰掛けだったと思う、そう言うの多いし、結婚式に呼ぶためだけの友達、そんな風にしか思えなかったけどな」

 男は曖昧に笑った。

「怖くないのか?」

「ぜんぜん、ずっと片思いだったし、あー利用されたんだなと素直に思えたかな」

 女は馬乗りになるなり首に手をかけた。

「こうやって殺したかった、今も行方不明のまま、消えちゃったんだね」

 そっと男に身体を預けるように女が頬をよせる。

「好きにしていいよ」

 女はしっかりとした目で男を見た。

 

 

 向かい合うのはいつだって苦手だ、殺したことを躊躇う気もない。

 ただ、自分もまた利用されていたのだと思えば思うほどに切なくなる。

 一度は本気で好きだと思えた、たとえ今、社交辞令であっても、男もまた、好きなときがあった。

 どうして、あの女を選んでしまったのか今となってはわからない。

 ただ好きだった。

 バスルームから出てきた女を前にしても、まだ躊躇いが消えた訳ではなかった。

 

 短編、狂気続編

reipisuto 5

2009/11/20 09:23

 男は静かにうなずいた。

 彼にとっての報復は父親を追い詰めることにあった。

「争いを望む子ではなかった」

 境界線を見失えばひとではなくなる、この父親とて、この場を去ればひとではない。

 過ちは繰り返すためにある、嘆いたところでなにも変わりはしない。

 彼が好きであった場所に佇んだ。

 今にも彼の声が聞こえそうだ。

 

 

     *

 

 

 

 ひととして生まれた以上、試したくはないか。

 たぎる今に、すべての運命を投げ捨てた。

 辛うじてひとの姿を保っただけの悪魔だ。

 壊れる、壊されていく、女の叫びはいつだって決まっていた。

「壊れたら直せばいいよ」

 壊れていない人間など最初からいない、破綻破滅しないように辛うじて生きている。

 それだけだ。

 じょじょに膨らんでいくバルーンに顔色が曇った。

「大人しくしないと痛いだけだよ」

 ぐっと、エネマプラグをアナルの深部に押し込むなり口元がわなないた。

 枝分かれするように薬剤を注ぎ込む先が、だらりと透明なボールに伸びている。

 注ぎこむたびに顔色が赤みを帯びていくのがわかる、じょじょに全体も高揚したように真っ赤になっていった。

「ほら我慢して」

 ほとんど原液と言っていいほどのグリセリンだ、慣れていない身体では耐え難いだろうね。

 今にも壊れると言いたげな顔だ、躊躇いもなく、さらに薬剤を流し込んでいった。

 痛みに打ち震えた身体をゆっくりさする。

「誰が欲しい?」

 

 強い興奮、淫靡なまでに退屈な奴らを狂わしていく。

 できないことを誰かに祈るのは当たり前のことだ。

 だから神が生まれた。

 一つの生贄だよ、社会の秩序を守るために、いつだって悪は生まれてくる。

 狂い咲いていくように乱れていく月夜は、ときに甘く、切ないほどに自由を奪っていくものだ。

 痛みはなにも知らないから生まれる、それさえも失えばひとではなくなるのだから。

 痛みは幸せな証拠だ、それさえも投げ捨てた君を見ていると許せなくなる。

 だからこそ止めない。

 当たり前の日常を壊したくなる。

 泣いてごらん、そしたら止めてあげる、ほら、わななく口元から気泡があふれてしまうよ。