SM小説 異端者

離岸流 15

 彷徨いだしたこころが涙でいっぱいになっていった。  厳かに葬儀が行われだす。 「どこまでも無神経ね。身寄りがないから可哀想だと思ったのに」  無神経なのはどっちのほう。結納が近づいている。 「琴子!」  木村を想うもの達が葬儀場に集まり焼香をしだす。  咽ぶ涙を必死に押し殺し琴子は葬儀場で動けずにいた。形だけ来た母親を琴子は睨んだ。 「本当に縁起が悪いわね」  黙って項垂れていた...

離岸流 14

「ありがとう。婆や」  咽ぶ琴子はずっと渡せなかった一枚の写真をハンドバックから取り出した。 「見て、婆や。ずっと言い出せなくてごめんなさい。生き別れた息子さんはとても幸せな家庭を築いていたの」  こんな形でしか再会させられなかった。 「本当にごめんなさい」  木村は頑なになぜ琴子の婆やになったのか教えてはくれなかった。だから執事に頼み無理に調べてもらった。  四歳のときに生き別れてか...

離岸流 13

 それなら、あたらしい鳥かごを用意してもらえばいいじゃない。  あのひとは、私と一緒。壊れたこころの残骸に押し潰されそうになっている。  なら、壊れてしまえばいい。  ここには、どんなタブーもない。私だけをあのひとは慈しんでくれる。    気絶するほどに愛された。    その場に項垂れた琴子は執拗に鳴り続けるスマーフォンを恨めしげに睨んだ。どこまでも私のこころの選択肢さえも奪...

飼育 8 倒錯 47

 ハルキの背後に隠れている航は思わず「でた!」と叫びたかった。      シュウが立ち去ったことを二人は確認した。 「大丈夫みたいだね」  また突然、シュウが現れないことを祈りながらハルキが表玄関からここに繋がる重い鉄製のドアを開けた。    こぼれんばかりに山積みになった瑞々しい野菜を航は食堂へと運ぶ。  いつしかハルキは談話室で眠ってしまった。  航はたくさんの土...

叫び 2

 コスプレなぞ興味がない。本物が欲しい。  男らはインモラルな遊びを持ちかけられ面白がっていた。優花を妬む友人の魂胆がそこにあった。 「いつもいつもいい子ちゃんぶってて腹が立つのよ! なに感傷的になってんだか。バッカじゃなの!!」  校舎に佇む優花を睨む聡子《さとこ》がいる。  聡子と米沢はすでに肉体関係があった。飢えた妖光は獲物を貪欲に追い求める。  部活の顧問であった米沢と聡子は二人...

飼育 8 倒錯 46

「そうなんですか?」 「ここはあくまでもシークレットだからね」 「それもそうですね」  SPが一度外にでて安全を確認している。 「僕も手伝うよ」  台車を奥からハルキがもって来ようとしていた。 「たくさん荷物があるのならシュウに頼んで表玄関から運び込んだほうがいいよ」  ハルキの声に航が歩き出そうとしていた。 「待って。いま、シュウはいないんだ。とにかく談話室で待っていようよ」 ...

生贄 完結

 宮下は腕時計をじっと見つ続けた。不安がる清美は宮下に抱きついている。そろそろ踏み切りの音《ね》が聞こえてもおかしくない。  そわそわと宮下はまんじりともせず腕時計を見続けた。  宮下は大きく息を吸い込んだ。こちらにむかってくる列車とともに踏み切りの音が聞こえる。 「清美」  その場に座り込んで動けない清美を宮下は立たせるとしっかりと手を握った。ずっとこうしていられたらいいいのにな――――。 ...

叫び

 季節とともに移ろいでいく校舎の光景が優花《ゆうか》は好きであった。  いつもと変わらない毎日が続くと優花は思っていた。  友達と一緒にいるよりも優花は一人が好きだった。 「ちょっと来てくれ」  不意に優花は体育教師である米沢から声をかけられた。  期末試験が近いせいか、優花が好きな校舎は静まり返っていた。 「先生?」  優花は疑うこともなく米沢について行っていた。米沢が体育館倉庫に...

生贄 68

「ありがとう。嬉しいよ」 「一緒に償い続けたい」  清美は三浦の話しに共感していた。 「うん、少し眠ろう。これだけ暖かければ眠れそうだ」  宮下は腕時計を薄暗い夜空の下、しっかりとみた。  まだ、うたた寝ならできる。  抱きよせた腕のなかで清美は幸せそうに笑った。  もう少しで駅内に明かりが灯る。    抱きよせた腕のなかで清美が安心しきった穏やかな寝顔を宮下にみせてくれる。...

生贄 67

 質素な幕の内弁当を宮下は清美に手渡す。 「これから、この先、まだ、なにが起こるのかわからない。服役が終わった頃には俺はもう爺さんになっているだろう。それでも守りたいんだ。清美のこれからを。なにも言わず守らせてくれないか。清美が本当にこころから笑える日がくるまで」  俯き、なかなか箸をすすめない清美に宮下は笑いかけた。 「俺は今日の日を絶対に忘れることはない。一生、死ぬまで」  黙々と食べ...

離岸流 12

 激情に溺れる激しいロマンス。  いつだって、こころときめいていたい。  求め合うもどかしさが尊敬にかわる。  その想いが愛であって欲しい。  お互いを尊重しあう。  なかなか簡単そうで難しい。  だから、男と女はいつだって、すれ違う。  僕だけの女神を五十嵐はいつだって求めていた。  いつか、また逢える。    そっと、おやすみ。  僕だけのビーナス。    ...

飼育 8 倒錯 45

 快速に飛ばすシュウとSPを連れたハルキが慎重に入り口に向かっている。  入り口に高々と積み上げ続けられるダンボール箱の中身はいったいなんなんだ。  入り口が近づくとSPがハルキを挟み込むように前後についた。  前方についたSPがそっと入り口のドアを開けようとしている。  知られてはいけない海運倉庫の本当の素顔。出入り口は厳重に管理されている。積荷をあげ下ろす表面を取り繕った外面の出入り口...

生贄 66

「それでよかったんだ」  宮下は空を仰ぎ「俺はバカだった。本当にバカだった」 「みやちゃん?」 「篤実《とくじつ》。わかるか?」  清美はただ、かぶりを振った。 「面倒見がいい里美さんと人情家な佐竹はいつだって困っているひとを見捨てられなかった。当時、俺はただの暇人。それぐらいにしか二人を思えなかった。本当に情けないよ。佐竹がいなければ俺は清美を助け出すどころかとっくに死んでいた」  ...

飼い殺し出版化

 飼い殺し出版化。    前回のアジサイ繋がりな表紙に思わず苦笑い。      飼い殺し      表紙が質素だから毎回、題名はインパクトがあるのを考えるようにしている。    しかし、年々変な天候になっていっている気がする。なかなか体調思わしくなく執筆できないのが残念。体調崩しているひと多いです。個人的に好きな声優さんも静養を声明。クレヨンしんちゃんの...

生贄 65

 あえて宮下は清美との距離をとった。清美は宮下の目をそっと覗き伏せた。  ドクンと鼓動が高鳴るのが宮下にはわかる。  今さらな感情に宮下は大きく戸惑い噛みしめた。誰かを好きになる感情ってなんだろうか。  刑期が十年だとして、来年二月に四十歳になる宮下は途方もない月日をどこか思い知らされる。  もし十年。  人生をやり直せたらなにができる? 清美は十年後に二十七歳になる。  刑期ほど、無...

生贄 64

 宮下を乗せた車の後ろにセダンがずっとついてきていた。  セダンの後部座席から後藤が下りてきた。佐竹も車から下りる。  宮下に作業用の毛布を佐竹が手渡した。 「本当にありがとうございます」  堂々とした出で立ち。まっすぐ佇むその姿に宮下は深々と頭を下げた。清美も慌てて頭を下げる。  頭を下げた宮下に後藤は微笑ましさを浮かべた。  下げた頭を宮下はなかなか上げられない。 「今日の日を忘...

夏風邪です

 今年は焼けるように暑いわりに熱帯夜がない。  こちらは盆地なんで日中は暑いんですが夜がなぜだか寒い。    おかげで自分を含めてまわりも夏風邪でバタバタ倒れています。    ここ、3日ぐらいから不調でしたがなんとか楽になりつつあります。    もう少し更新お待ちいただければと思います。 1か月分のみの記事をまとめて見る。...

離岸流 11

 切り裂かれたブラジャーから顔をだした乳房に五十嵐は満悦を浮かべた。縄が映えるだろう琴子の豊満な乳房を五十嵐はつかんだ。  無駄な贅肉がついていない肉体はまさにエロスそのもの。 「いいよ」  指先で琴子の全身を五十嵐はさする。と、五十嵐はどっしりと椅子に腰掛けた。  自由を奪われた琴子は素肌に食らいついた縄の息苦しさにうめき声を思わずもらす。  五十嵐は吊られたままの琴子の全身を眺め続け...

生贄 63

 後部座席にあった作業用のジャンパーとタウンジャケットを佐竹は手にした。 「お嬢ちゃんにはサイズが大き過ぎるがその格好では目立ち過ぎる。まだ、こっちのほうがいいだろう」  佐竹は妻をなぜ、見殺しにしたのか宮下に聞かなかった。聞かれても宮下には答えようがない。ただ清美が本当に可愛く愛しい。  心変わりだと片付けられるそんな甘い感情ではない。  どちらに転んでも選択肢は一つしかなかった。 「...

生贄 62

 話したいことはたくさんある。ただ一度に話してしまっても意味がない。 「次のインターでおりる」  佐竹が腕時計を覗くと「思ったほど早くつかなかったな。ま、お前と久しぶりに話せてよかったよ」  宮下の肩を叩くと佐竹は「お前は二人の女性を殺したに等しい。お前達の逃走がもう知れていることだろう。女房がこれからどんな目に合わされるか、見殺しにしたお前の罪はなによりも重い。いつか、お前が自首できる日が...

生贄 61

 子供の学校も毎年、区役所に出向かなければいけないが、今、住んでいる地区の学校へ通うことができる。  住民票に閲覧制限をかけることで意図しないストーカー被害を水際で止めることができるかも知れない。  そればかりか、自らのプライバシーを第三者から覗かれる心配はない。  いつ犯罪に巻き込まれるのか、それは誰にもわからない。 「三浦はこずえさんがいたから社会復帰ができたんだ。こんどは私が守る番だ...

離岸流 10

   こんな歪な形状だっただろうか。鬱蒼と生い茂る廃院を前にして琴子は車が止められそうな轍を探しながら、ようやく車を止めた。     「もう、誰かを知っていてもおかしくない年齢なのに。それとも奥手なだけかな?」  野蛮な男らに引き千切れられように脱がされたショーツがその場に投げ捨てられた。 「僕は奴隷という言葉が嫌いだ。君は奴隷じゃない。僕だけのものだ」  暴れ動こうにも...

生贄 60

「身寄りのない者は刑務所をでると更生保護施設に身を寄せることになるんですが、これがまた荒くれ者ばかりで、更生保護施設から入居を断られるケースもあります。そうなるとホームレスです。または刑務所内で仲間となったアジトにむかい直ぐに再犯に至るケースもあります。元受刑者の半数は遠くからみていたほうが安全です。やはり後ろ指を指されてもしかたがない元受刑者は多いです。でも本気で更正したいと考えている元受刑者も...

飼育 8 倒錯 44

 SMプレイは形を追うのではない。脳に快楽を叩きつけ覚えさせる。  歪んだ性欲のシグナル。  怖いが欲しいという感情はスリルがあればあるほどに脳のなかに忘れられない記憶となって残る。それが調教だ。エクスタスーをとことんと引きずりだす。  そこまでできなくても、視覚を塞ぎ淫らに囁くことはできる。 「んんっ!」  じょじょに怜奈の唾液によって粘着の強いガムテープ剥がれてきている。  排泄に...

生贄 59

       *  法務省HP引用    帰住先が確保できないまま出所し,再犯に至る者が多数に上る。帰住先がない者ほど刑務所への入所を繰り返し,再犯期間が短い。生活の基盤となる「住居」を確保することは,刑務所出所者等の再犯防止を図る上で欠かすことができない。        *    しかし現実は厳しい。      生活保護者になろうにも住居が必要だ。保...

生贄 58

 静かにハンドルを握り続ける三浦は「こころから感謝してます」  どこか涙咽ぶ声に清美と宮下は顔を見合わせた。  重い沈黙がしばらく流れた。  その沈黙を押しやるように佐竹が話す。 「こいつな、こーんな顔をして生まれたばかりの娘をみたんだ。釣瓶みたいな顔をして「嫁にはだせん」と言いやがって、まだ生まれたばかだというのにな」  おどけるように佐竹が目尻を横に引っ張った。 「三浦は毎月、殺し...

生贄 57

 黙って佐竹の話を聞き続ける清美に佐竹は「お嬢ちゃんには難しいな」  清美は「ううん」と言った。 「そうか」  生卵と小麦で汚れた清美の髪を佐竹は優しくさする。 「タオルありますよ。少し汚れてますけど」  三浦が助手席に置いてあるタオルを手にした。結露を拭いたタオルで「よろしければ」前方を確認すると三浦は手早く佐竹に手渡した。 「慣れてるな」  手渡されたタオルをさっと眺めると汚れて...

生贄 56

「そうですね。もしそうだったらと考えると自分はどうしていたんでしょう。どんな形であってもひとを殺してしまった。思い描いていた抗争劇は本当にひとが死んでしまう。なぜ、そこに気づかなかったんでしょう。でもそこに本当の岐路があった。組織が私を庇えばまた違った人生がありました。でも、組織からしたら私はただの捨て駒です。服役するときに気づいたんです。上層側はいちいち下っ端のほとんどを気にしてません。どうせ、...

離岸流 9

 野蛮な男らの後ろを五十嵐は黙って続いていた。  押し込まれた室内にさすがの琴子もたじろいだ。 「…………なかなかの趣味ね」  きっと琴子は五十嵐を睨んだ。 「褒めてくれて嬉しいよ。きっと君に似合う世界だ。ありがとう」  堂々たる琴子の態度に男らが舌打ちをした。琴子の髪を荒々しく力任せに掴む。 「やめないか」  五十嵐の声に琴子は、どきりとさせられる。 「いつか、こんな日がくると信じて...

生贄 55

 清美が宮下にしっかりと項垂れた。 「怖いか?」  こくりと頷いた清美の手を宮下は力強く握った。 「チンピラのような末端は数え切れないほどにいる。あらかじめ逮捕を偽装された組員もいました。まさに出る杭は打たれる。いくら組織に貢献しても見返りはありません。自らの派閥をつくり生き残ろうとしてもほとんどが組織から危険因子として潰されてしまう。ドラマとは大きくかけ離れた世界。想像以上に地味でした。あ...

飼育 8 倒錯 43

 流し込まれる量が増えるにつれて怜奈のかぶりは深くしっかりとしたものになっていた。  まだ流しこめるが片桐はグリセリンによってアナルがやわらかさを覚える過程を選んだ。 「んんっ!」  この程度なら思わず吐き出してしまう量ではない。片桐はしっかりと閉じたアナルに拡張を施す。  ワセリンで濡れた指先がこれ以上を拒む怜奈のアナルを押し広げだした。アナルのなかに押し込まれた指先がアナルのなかを泳ぐ...

生贄 54

 たけのこの里を食べだした清美に宮下は話しかける。 「清美、何歳なんだ?」  いままで騙され続けていたのなら、こころを開くまでが怖いだろう。 「悪い奴ばかりじゃないぞ」 「…………うん」 「騙されているのなら、もう俺たちは死んでいると思うぞ」 「…………うん」  宮下の顔をしっかりとみると意を決した清美は笑った。 「来年で十七になります」 「来年って何月だ?」 「一月」  佐竹は一瞬...

生贄 53

「ビールよりこっちがいいか?」  佐竹は清美にペットボトルに入ったお茶を手渡そうとした。 「大丈夫だよ」  苦笑まじりの宮下の笑みに強張っていた清美の顔がしだいに穏やかさを取り戻しかけている。 「…………ありがとう」  ようやく清美は佐竹が差し出したペットボトルに入ったお茶を受け取った。  そのまま佐竹はつまみをコンビニ袋から取り出す。宮下は清美に渡されたビールを手にすると飲みだした。 ...

離岸流 8

「また来るね。琴子ちゃん」  琴子は女性捜査官がいなくんなると、ほっと肩の力を抜いた。ドアがまた叩かれる。琴子は「一人にして欲しい」と頼んだ。 「お嬢様」 「ありがとう。婆や」  無意識に琴子は女性捜査官の名刺を破り捨てていた。  五十嵐を取り囲む男は大嫌い。でも琴子は五十嵐のことがどうしても脳裏に焼きついて離れない。  こんなことまでされても琴子は五十嵐を嫌いになれないでいた。  ...

生贄 52

「…………うん」  じっと佐竹を伺い知ろうと清美はしていた。 「本当にあいつらの仲間じゃないの? 本当に仲間じゃないの?」  宮下は静かに清美の呟きに幾度も頷きみせる。 「騙されて、きょんちゃん殺されたんだよ」 「清美」  顔を逼迫とさせる清美を宮下はなんとかして落ち着かせようとする。 「俺たちが仲間だとすぐに信じられないのならしかたがないだろう。そろそろ、お前たちがいないことに気づいて...