SM小説 異端者

怨憎会 10

 聡の視界を邪魔しないように女が聡とまぐわう。  腰をしきりに振る女に聡は思わず声を漏らす。  千尋もまた、声を張り上げようとしていた。押し込まれたバイブレーターが引き抜かれると伊藤は一人の男と入れ替わった。  熟れきった陰核を舌先で転がすように男は刺激する。  震えあがる両足は閉じることを許されない。陰核を舌先で刺激されながら、振動を続けるローターが押さえつけられる。  千尋は終わるこ...

宿カレ・宿カノ 30

「私も今日、メルマガを登録させてもらったよ。次の配信が楽しみだ。バックナンバーが非公開だから稲葉から聞き出すのが大変だったよ。メルマガを見せる代わりが、ここの飲み代だ。いやー高価なメルマガに参ったよ」  千春はどう返していいのかわからず、愛想笑いを浮かべるしかない。  牛すじを食べ終えたとこで千春が「ご馳走様でした」と言った。  千春が立ち上ったところで稲葉が店主に、おでんの持ち帰りを頼んで...

怨憎会 9

   千尋。  苦快の報いを、  噛みしめるように味わうといい。    聡は荒い遣いのなかで化粧っ気のない女に目を遣る。    こんなことをさせられても平気なのか。  思わず吐き出してしまったスペルマをこの女は旨そうに舐めた。  まるで猫のように、この女は聡のペニスを弄ぶ。  目を閉じると耽美な音色が聞こえる。  くちゅんと、した音をたて伊藤はバイブレータで千尋の...

宿カレ・宿カノ 29

「僕の同期。松前と言うんだ。前々から是非、千春ちゃんに紹介したいと思っていてね」  松前は千春に名刺を差し出すと「よろしく」と言った。 「よろしくお願いします。こんばんは。編集長」  千春は名刺を財布にしまうと頭を下げた。 「早速だけど、原稿を見てもらうといいよ。立ち話もなんだし座りなよ。千春ちゃん」 「はい」  松前がパラパラと原稿を見る。 「小説を完結させたことはある?」 「あっ…………。まだ、で...

宿カレ・宿カノ 28

 稲葉の連絡に千春は慌てたがメルマガの不備ではなかった。  メルマガの提案から一か月を過ぎた頃、ようやく記念となる第一号が配信された。記事の書き方を北村に訊き、おっかなびっくりの千春だったが根気よく北村は千春に付きあってくれた。  お堅い話ばかりでは息が詰まろうだろうと千春がクイズや小ネタを書き入れたらどうだろうと提案した。  メルマガの担当を任された千春は張り切っていた。  じりじりと千...

宿カレ・宿カノ 27

 数えるほどしかないスマートフォンに登録されている連絡先。結城は北村の名前を見つめていた。 「あれ、部屋間違えちゃったかな」  わざとらしく大学生風の男二人が勝手に入って来た。 「一人?」  馴れ馴れしい言い草に結城は苛立った。思わず顔をあげると「なんだ、ババァか。行こうぜ」  ドアも満足に閉めず男らはでていった。 「なによ」  好きでババァになったのではない。  遣る瀬ない思いが...

怨憎会 8

 黙って魅入る聡に伊藤の視線が注がれた。 「業感をご存じかな」  聡は黙って伊藤を直視する。くぐもった笑いに聡は思わず鳥肌を浮かべた。こいつ、いかれていやがる。  そう思っても聡はそんなことくちにすらできない。常軌を逸した伊藤は「苦楽の報い」と言うと、嗜虐に満ちた冷たい瞳のなかに聡が映る。 「意味のないプレイに飽きましてね」  聡はどう返事を返していいのかわからない。黙り続ける聡に「面白...

怨憎会 7

 はじめて見る千尋のヌードに聡は興奮を抑えきれない。左の乳房に赤い薔薇のタトゥーがある。  千尋のジーパンを脱がしに男らが取り囲むと千尋は不自由な体制であっても抵抗しようとしている。  伊藤は乳房に折り畳み式ナイフを軽く突き立てると、ゆっくりと千尋の肌を切り裂いていっている。  痛みに顔を歪ませきった千尋はあまりの恐怖からか、伊藤を恐々と窺う。 「やめて」  抵抗しようとする気力が伊藤が...

宿カレ・宿カノ 26

「だれがストーカーだ!」  不意をつかれた結城は健之に力任せに突き飛ばされた。そのまま蹴り上げられる。 「おい!」  健之から髪を掴まれ結城は力づくで立たされた。拳を振り上げた健之に結城は言った。 「兄が弁護士だということ忘れたの」  健之は昔から気に入らないと物にあたり怒鳴り散らすことは日常茶飯事だった。もちろん結城にも暴力を振るう。  そのあとは直謝りする典型的なDV男だ。 「殴...

怨憎会 6

「それでは、そろそろ初めましょうか」 「なにをする気」  狼狽える千尋に伊藤は邪気を浮かべる。  伊藤が千尋に近づくにつれて千尋は足を蹴り上げようとしている。 「まだ、わからないのか」 「なによ!」 「お前は囚われた、ただの蝶だ。それも生きたまま羽を毟り取られる業感に満ちる」  聡の顔を一瞥すると伊藤は嗜虐に歪んだ口角を釣り上げた。 「来ないで!!」  千尋が大声を張り上げた。 ...

宿カレ・宿カノ 25

「お肉なんて何か月ぶりだろう」  痩せっぽちの薄ぺっらい体でよくもまー食べるものだ。  ペロッとご飯を千春は食べ終わると稲葉に勧められるがままビビンバを頼んだ。 「あんた、どんな食生活しているのよ」  少しは遠慮しなさい。  そう諭す結城の視線に気づいた稲葉が「千春ちゃんは僕の孫のようなものだよ」 「社長!」  少し千春に甘いのではないかと結城の眼差しが険しくなった。 「朝は卵かけ...

宿カレ・宿カノ 24

 反面教師に父親を。  いつも笑顔を絶やさない母親をお手本にし、千春はまだまだ前途多難だろうが一つ一つをしっかりとクリアしていきたい。 「せっかくの金曜日だ。我が社は土日が休み。たまには、同じ釜の飯を食うのもどうだろうかね」  稲葉からの報告に結城は素っ気ない態度ではあったが頷いてくれた。  北村も結城が頷くことでようやく承諾してくれた。 「今の若い子に同じ釜の飯を食う。そんなことを言っ...

怨憎会 5

 聡は尾田が言う住所をメモすると酔いが残る頭で車を運転する。  廃墟と化したラブホテルに急いで聡は向かう。すぐに金が渡せるように事前に300万円を容易しておいた。  カーナビを頼りに聡はひたすら車で走り続ける。  インターを降りて山中近くに差し掛かったところで尾田が指定する廃墟がみえてきた。  車が数台止められている。  聡が車を止めると一人の男がでてきた。  余計な事は一切「話すな」...

宿カレ・宿カノ 23

 まさかの展開に千春は「よし」とポーズを作る。  昼休み稲葉が話し相手になってくれてありがたかった。  午後のことを考えると食欲がわかない千春であった。  どこか浮足立ってしかたない。そわそわしながらも千春は午後の仕事をはじめようとしたとき、北村から呼ばれた。 「社長から話があるそうだ」  稲葉がせっかく弁当を交換してくれた。失礼にあたらないように千春は無理をして食べたが、いまさらになっ...

宿カレ・宿カノ 22

「メディア洗脳」  独り言を呟くように千春は言った。的を得ない千春の発言に黙って聞いていた結城の目が千春を諌めるように鋭くなった。 「今までの報道がそうだった」  北村は機転を利かせ千春に説明を続ける。 「一昔前ならメディア洗脳も上手くいっただろうが今は拡散社会だ。見識あるものが先導をとることで生活保護が悪であるというメディア洗脳を一先ず阻止することができた。国もいい加減、戦時中の策略から...

宿カレ・宿カノ 21

「簡単にいえばこれから先の走り書き。自分が次になにを書いてどうしたいのか。ざっとでいいから書いておくと楽だよ。そうしたら夜更かししないですむだろう? 筆が乗っているときは次に次にとどうしても書きたいものだけど、なかなかそうはいかない。記事も同じだよ。忙しいと幾つもの記事を書きながら原稿をチェックすることもあるから、自分がわかるメモだと思えばいいよ」 「ありがとうございます」  千春は立ち上がる...

怨憎会 4

 聡はこの場から逃げるように部署をでた。今までのことはなんだったんだ。  ホテルどころかキスすら千尋は今まで応じてくれなかった。  千尋に愛憎を通り越した殺意が浮かぶ。  聡は部署に戻ることもできず彷徨うように街中を歩いた。  なんどか会社から着信があったが聡はでない。  このまま、あの二人が幸せになるなんて絶対に認めるものか。  聡の脳裏に報復の文字が浮かぶ。 「よお、兄弟」  ...

宿カレ・宿カノ 20

 今日こそは合格とまでいかなくてもせめて提出する資料だけでも千春は北村に受けって欲しい。  慌ただしいまでに午前中が終わると千春は力尽きたように椅子に座った。 「疲れた」  深く背凭れに体を預けしばらく千春は目を閉じていた。 「千春ちゃん。お疲れのようだね」 「社長」  気がついたら結城がランチに出かけていた。 「お弁当、僕もご一緒していいかな?」 「はい」  千春は深々と座って...

怨憎会 3

 嘘が上手い女ほど、のさばるものだ。  千尋の作戦は想像以上に大成功した。 「結婚したら博に会えなくなっちゃうね」  廊下で千尋は博とすれ違うと博から声をかけてきた。  噂は「本当なのか?」問いかけてきた博に千尋は「本当はね、聡のことなんてどうだっていいの。でも博より先に結婚しないと堪えられない。私、辛くて死んじゃうかも知れない。それって一番、迷惑なことだもの」  少し考え込むと博は「ま...

宿カレ・宿カノ 19

 どれけ派遣で嫌な思いをしてきたか。派遣だからよかった。3か月の我慢だ。底意地の悪い上司を結城は心底、嘲笑っていた。      それぞれの思いが交差するなかで,、その日もいつものように終わった。    千春は帰り際、百均でメモ用紙をはじめて買った。  北村に手厳しく言われた千春はしょげ返っていた。が、なにも言われなくなったら、それこそ本当の終わりだ。  深夜のアルバイトを...

怨憎会 2

 聡は自分のなかで女性の幻想をできるだけ創り上げないように努力してきた。  外見に振り回されず結婚を意識すれば性格が重要視される。  それに外見の好みが重なれば、これほど嬉しいことはない。  聡の願い、願望そのものが千尋だった。 「よかったら、僕と付き合ってください。ずっと千尋ちゃんが好きでした」  閉店とともに千尋と聡は店をでた。  タクシー乗り場で聡は意を決し、ついに千尋に告白した...

宿カレ・宿カノ 18

 今にも泣きだしそうな千春に結城は声をかけたかったが、それは優しさではない。 「北村に負けるな」  結城は千春に声にならない思いを投げかける。  無意識に涙を拭っていた千春だが、ついにトイレに走り出していった。 「千春ちゃん、明日、出社できるといいけどな」  北村の叱責に稲葉が社長室に掛るロールカーテンの隙間から千春を心配げに覗いている。 「これぐらいのことで負けていたら、作家なんて永遠の夢だよ。...

怨憎会

「くそっ!!」  怒り任せに聡はテーブルを叩いた。  結納が近づいた蝉時雨。  本当なら、いまが一番、二人にとって楽しい時期なはずだった。  別れは突然訪れた。 「ごめんなさい。好きなひとがいるの」  前々から不自然だと思うことがあった。それでも聡は千尋を信じてきた。  一年前、忘年会で千尋と聡は偶然、同席した。前々から気になっていた千尋だけに聡は酔いも手伝って夢中でジョークを投げか...

宿カレ・宿カノ 17

 不安がないといったら嘘になる。しかしこのままでは千春が可哀想だ。  ここは千春の頑張りで結城をギァフンと強く黙らせてやって欲しい。  結城を支配する全能感を払拭できれば結城も千春とともに大きく成長してくれるだろう。  北村はコーヒーを啜りながら、まだ更新していない会社のツイッターを眺めていた。  会社に戻れば千春の頓珍漢が待っているだろう。それに結城が過敏に反応する。  腕時計をみると...

宿カレ・宿カノ 16

 生活保護費は一律ではない。  おなじ世帯でも保護費が違うことがある。  ただ――――。  保護費を少しでも多くもらえることを全面に押し出しては意味がない。  騒ぎ立てるだけの野次馬にわざわざ餌を与える必要はない。 「どうしようかな」  ポツリと千春の独り言が零れた。千春のいつもとは違う硬い表情にどこか結城は安堵する。  ミーハーにエンタメを書いている様子はない。北村から厳しく言われた千...

宿カレ・宿カノ 15

「わかりました。社長がそこまで仰るのなら、この子の呆れた記事を待つことにします」 「そうかい。ありがとうね、結城君。じゃあ千春ちゃん。いつもの美味しいコーヒーをお願いね」 「はい」  いつものコーヒーと云ってもインスタントコーヒーだ。  ぼんやり給湯室で千春が考え込んでいると北村が千春にアドバイスをする。 「休む時は休む。考えるときは、しっかりと考え調べる。仕事ができる奴は時間の使い方が...

宿カレ・宿カノ 14

「反対です」  結城が勇ましく立ち上がった。 「アルバイトに責任はありません。私は反対です」  結城が噛みついてくるだろうと北村は考えていたが、やはりその通りになった。 「千春ちゃんも結城君も今日も元気だね。おはよう」  稲葉が結城の声を待っていたかのように社長室から出てきた。 「おはようございます。社長!」 「うんうん。結城君が言いたいことはわかるよ。千春ちゃんはチャンスがあったら...

宿カレ・宿カノ 13

 面白いとは感じなかったが今まで自分が描いていた甘い幻想をどこか思い知らされた。  父親がいたから、当たり前のように結城は贅沢してこられた。底辺で足掻く人たちを見ていくにつれて結城の考えが少しずつ変わっていった。  底辺から抜け出すのは容易なことではない。でも恵まれた自分よりもしっかりと人生を歩んでいる気が結城にはしてならない。  時に考え足を止める。今まで取材をしてきた数々は結城の中で大切...